清水トンネル開通の日
12月29日 木曜日 はれ
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。
向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落した。雪の冷気が流れこんだ。娘は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ呼ぶように、
「駅長さあん、駅長さあん」
明りをさげてゆっくり雪を踏んで来た男は、襟巻で鼻の上まで包み、耳に帽子の毛皮を垂れていた。
もうそんな寒さかと島村は外を眺めると、鉄道の官舎らしいバラックが山裾に寒々と散らばっているだけで、雪の色はそこまで行かぬうちに闇に呑まれてい た。
この文章、最初の書き出しが有名で憲法の書き出しは知らなくても 大抵の方が「○○さんの○○か」ってわかっちゃう。
で、今日のブログは書き出しの「国境の長いトンネル」の話。
群馬県と新潟県にまたがる谷川岳は登山者の事故死者数が世界ナンバー1。これまで800名以上の死者数を数えています。
そんな危険な山岳の中腹に穴をあけ北陸の僻地(失礼)だった新潟まで線路を伸ばしたのが国境の長いトンネル「清水トンネル」。
長くなるので端折ります。
今日はこの長いトンネルが開通した日。総延長9km、延べ240万人の力で7年の歳月をかけ出来上がりました。
このトンネルが無かったら「雪国」の書き出しも変っていたことでしょう。